90年代のR&B世界では、たくさんの男性ボーカルグループが世に出てきた。
最も有名なBoyz II MENに始まり、JodeciやBLACKstreet、
さらにSilkやSHAI, Hi-Fiveなど名前を挙げれば切りがない。
今回の投稿では、そんな90年代に活躍した男性R&Bグループの中でも、
テキサス出身の3人組「H-TOWN」の楽曲を取り上げたいと思う。
このH-TOWNという名前はヒューストンの俗称だ。
メンバーはリードボーカルのDino Conner, 双子の弟でコーラス担当のShazam Conner,
そして彼らの友人のGI Jacksonの3名から成る。
このバンドの一番の魅力は、なんと言ってもDinoの唯一無二のハスキーボイスだろう。
最近R&B界隈で、こんな渋い歌い方をする人はなかなかいないのではないだろうか。
今回取り上げる曲
H-TownはリードボーカルのDinoが2003年に交通事故で亡くなるまでに
4枚のアルバムをリリースしているのだが、今回は彼らの2ndアルバム「Beggin’ After Dark」に
収録のリード曲「Back Seat (Wit No sheets)」のコード進行を取り上げたいと思う。
「Back Seat (Wit No Sheets)」(1994)
動画はH-Townの公式Youtubeチャンネルより。
ちなみに冒頭でグラサンをかけて喋っているのが、
この曲をプロデュースしたBishop “Stick Burrellという人物。
H-Townの最初の2枚のアルバムのほとんどはこの人がプロデュースしているのだが、
なかなかクセのある曲が多く、コアなR&Bファンにはぜひ聴いて頂きたい。
コード進行
さてコードをとってみるとこんな感じだった。
Key of A Verse |DM9, C#m7|F#m9, E9, Ebm7b5|DM9, C#m7|F#m9, E9, Ebm7b5| |DM9, C#m7|F#m9, AM7|Bm7, Bm7/A|G#m7b5, Db9, (Bm11)| Pre-chorus |Aadd9/B, C#m7|C#m7, F#m9|Aadd9/B, C#m7|C#m7, F#m9| |Aadd9/B, C#m7|C#m7, F#m9|Aadd9/B, C#m7|DM9, Bm7/E| Chorus |DM9, C#m7|F#m9, E9, Ebm7b5|DM9, C#m7|F#m9, E9, Ebm7b5| |DM9, C#m7|F#m9, AM7|Bm7, Bm7/A|G#m7b5, Db9|
Verse部分で個人的に弾きづらかったコードのボイシングを一応メモっとく。
Db9 左手:Db 右手:B Eb F Ab
Bm11 左手:B 右手:R: A D E
考察
なんだか忙しい感じのコード進行に見えるが、解釈としては最初の4つのコード(DM9→E9)までは、いわゆる「4-5-3-6進行」になっている事が分かる。
この曲のキーはAなので、ダイアトニックコードの構成音である「AM7-Bm7-C#m7-DM7-E7-F#m7-G#m7b5」の中から4-5-3-6と順番に弾く事でこのコード進行が作れる。ありきたりなコード進行でもサウンドにクセを感じるのは、ナインスの音が入っている事によるものが大きいだろう。
そして、同じ進行を3回続けた後、7小節目あたりから終止に向かっていく流れだ。ここのDb9は、Aのキーには含まれない転調コードに当たる。
最後のBm11だが、曲を聴いてみるとこの部分にコードが入っているように聴こえるのだが、弾かなくてもあまり影響が無いようにも思うので、括弧付けとしておいた。
次にプリコーラスのコードについてだが、ここでもナインスが際立つ。
最初のコードAadd9/BはAメジャーの3和音にナインスのBの音を足し、ルートも同じくBに揃えてある。これによって、単純なAメジャーのコードにクセが加えられている。
しばらく同じコード進行が続いた後、最後の8小節目のBm7/Eは、いわゆるツーファイブのオンコード。これを経て、コーラスに移る事になる。コーラスのコードは先に挙げたバースの部分のコードと同じだ。
以上がこの曲で使われている主なコード進行となる。
終わりに
H-TownはリードボーカルであるDinoの死後、しばらく活動を休止していたが、現在では2人組として活動を再開し、新曲もリリースするなど活発に活動している。最近の曲は作風もだいぶ今っぽくなっている。
「Green Light 713」(2020)
今日はこのくらいで。
オリマテ(Oriental Material)
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